前田泰昭(まえだ たいしょう)
日展特別会員
日本新工芸家連盟顧問(元副会長)
九州新工芸家連盟名誉会長
佐賀県陶芸協会顧問(元会長)
有田陶芸協会顧問
元佐賀県立有田窯業大学校長・九州芸術工科大学教授 鈴木健二先生(故人)による、
前田泰昭の評です。
有田は地場産業が磁器製造であるから、優秀な陶磁工が多いのは当然である。それだけに技に凝って、巧に溺れがちになる。形態は完璧を追って綺麗すぎ、精神の遊びや高揚は沈静しがちになる。伝統に安住するならともかく、創造を旗印とする立場を推し進めるのは楽ではない。新芽がすくすくと育つには、古いしがらみがあまりにもあり、その傘の保護のもとに逃げ込みがちになるのである。そのような状況にあって前田泰昭さんは毅然として着実に探求し続けてきた。多年にわたり課題としてきた辰砂の赤と染付の青で彩る調子は、ともすれば過度になって破綻をきたす危険性をもつのを、細心の配慮で緊張感に満ちた様相に導き、日展特選を再度受けた栄光に示されるように、今やすっかり独自の境地を確立している。今後は一層の精進によって幅と深みをつけられることを願ってやまない。